現在、発売中の『週刊ポスト』(1月31日号)と
『ニューズウィーク日本版』(1月28日号)が
靖国神社を取り上げている。
『週刊ポスト』は
「フォトルポ 靖国神社 新聞・テレビ報道ではわからない奥の奥」と
題した巻頭のカラーグラビア8ページの企画。
私も些かお手伝いしたから手前味噌になるが、
貴重な写真が満載で一読の価値はある。
切り口は
「世界では米国のアーリントン墓地のように戦死者を
慰霊する施設が問題視されることはない。
様々な議論があるが、百聞は一見にしかず。
まずは一度訪れることをお勧めしたい」というもの。
『ニューズウィーク日本版』は「劇場化する靖国問題」という特集。
2本ほどは以前の記事の再録ながら、タイムリーで読み応えがある。
事実誤認や、やや混乱した記述もあるが、
商業ジャーナリスズムとしては全体として
バランスの取れた内容になっている。
表紙にある
「戦没者のための慰霊の場を外交対立の道具に変えた
中韓の欺瞞と日本の怠慢」というキャッチコピーが、
編集部の基本的なスタンスを示している。
近年は反対派から靖国批判の材料にもされている、
同神社の付属博物館、遊就館をめぐる記述を2ヵ所、
引いておく。
J・バークシャー・ミラー
(米戦略国際問題研究所太平洋フォーラム研究員)
「実際に遊就館に行ってみて、私はいい意味で驚かされた。
展示は内省的な内容で、戦争を美化するものではなかったからだ。
遊就館を見終わった私は、こういう感想を持った。
多くの戦争を経験してきたすべての国と同様、
日本にも戦死者への哀悼を表現する場所があっていい、と」
廖建明(ジャーナリスト)
「私は靖国神社自体にはまったく問題を感じない。
ただ、その敷地内にある軍事博物館の遊就館はひどいものだ。
遊就館は、戦争の歴史をゆがめている。
日本の戦争は正しかったとたたえ、悪事から目を背ける。
実際、遊就館には中国が批判するすべてがある。
だが批判する人々は、ある決定的な事実を思い起こす必要がある。
靖国神社も遊就館も、奉納金や寄付金などによって
運営されているということだ。
もし国が助成していたら大騒ぎになるだろうが、そうではない」
靖国神社は慰霊(同神社では「奉慰」という言葉を使う)だけでなく、
顕彰の「聖地」でもある。
むしろ重点は、顕彰の方にあると言ってよかろう。
だから、中国系ジャーナリストが遊就館の展示を観て、
彼の観点からは
「日本の戦争をたたえ、悪事からは目を背ける」と
受け取られてしまうのは、ある意味ではやむを得ないのかも知れない。
だがアメリカの研究者が同じものを観て、
その「内省的な内容」に「いい意味で驚かされた」と
感想を述べているのは、興味深い。
なお、1月25日発売の『WiLL』3月号に
「『靖国参拝』もう中断は許されない」という一文を認めた。
紙数の制約で述べ足りないところもあるが、
関心をお持ちの方は覗いて欲しい。